結婚不適合なふたりが夫婦になったら――女嫌いパイロットが鉄壁妻に激甘に!?
濃霧発令中の結婚生活
六月に入り一週間が経った頃、気象庁は梅雨入りを発表した。
優成と結婚して一カ月が経過し、史花は新生活にも慣れつつある。なによりうれしいのは、職場までの時間が大幅に短縮されたことである。
それまで電車で一時間半かかっていた通勤時間が、四分の一以下にまで減ったのだから。一日のうちに二時間も自由な時間が増えたのは、とても大きい。
ものすごく得した気分ではあるのだけれど……。
(結婚生活って、こんなに味気ないものなの?)
ダイニングテーブルに座った史花は、向かいの席に準備した朝食を見て首を捻った。その席に座るべき優成は、少し前に家を出ている。
事前に聞いていた彼のシフトによれば、今日は日勤の史花と同じくらいの時間の出勤だと見込んでいた。ところが一緒に食べようと準備した朝食の席には、史花がひとりきり。
『一緒にどうですか?』
支度を終えた彼を誘ってみたものの、『時間がない』とあっさり振られてしまった。
それならせめて、おにぎりでも作って持っていってもらおうとしたら、それも必要ないと言う。
ひとりで食べるはめになったのは、昨夜のうちにしっかり確認しておかなかった史花の落ち度だとわかっている。優成にも自分なりのタイムスケジュールがあるだろうから。