会社に戻ると、営業部ではほとんどの営業担当が出払っており、雪夜さんと柿澤も外出中だった。

私はデスクに着くとパソコンを開き、明日の有休取得の申請をした。

優一郎先生と話して心の重荷が取り除かれたような気持ちになれた。

問題は解決したわけじゃないけど希望が見えた気がする。

だけど張りつめていた糸が解けた瞬間、心身の疲れが一気にやって来て、さすがに休息の必要性を感じていた。

（明日は休む。１日中ダラダラしてリフレッシュする）

思い切って週の半ばを休んで、残りの木金を頑張る。私はそう決めた。

社内共有システムのスケジュールに明日の有休を入力して、オフィスにいる社員たちに明日は休む旨を伝えた。

そして定時まで事務処理をして、今日はこれで上がることにした。

（昨日は柿澤に手間を取らせちゃったな……）

帰り支度をしながら、柿澤に悪いことをしたと思い返していた。

昨日、品川駅に着いた後、何とか一旦涙を引っ込めて山手線ホームに向かおうとした時だった。

「いっけね、俺忘れ物したわ！　会社に取りに戻んねーと。気にしないで気をつけて帰れよ、じゃーな」

柿澤はそう言って足早に会社まで戻って行ったのだ。

◇◇◇

マンションに帰宅すると、もはや何をする気にもなれず、魂が抜けたみたいにただ呆然としていた。

優一郎先生と話し、原因を探り当てたことで、悲しみも怒りの感情からも一気に解放されてスースーする感覚になっていた。

（優一郎先生の浄化能力はすごい……）

それと問題解決能力がすごいのかもしれないし、過去に唯菜さんに振り回された経験値の高さゆえの解答だったのかもしれないけれど……

私はふわふわした頭でそんなことを考えていた。