過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

酒場の影法師

開店のベルが鳴ると同時に、篠原が雪乃の元へ駆け寄った。
「ナナ、今指名入りましたよ」

一瞬耳を疑い、思わず顔をしかめた。
「誰ですか?」と問い返すと、篠原は少し声を潜めて答えた。
「高道さん、かな」

高道元(たかみちもと)――都内の美容系病院を経営する50代の男。

これまでも何度か、指名せずにふらりと来店し、酒を煽ってはさっさと帰っていくことが多かった。

女の子に飲ませるのが好きで、一緒に飲める酒好きな子を好むという噂がある。

そんな男が、なぜ自分を指名したのか。
理由がわからず、胸の中に戸惑いと不安が混じる。

静かに息を整えながら、雪乃はゆっくりと席へと歩みを進めた。
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